やさい日記

複線的人生の創造

鳥の羽根にまつわるおはなし 甲骨文字から宝塚歌劇まで

書道史講座を受講しています。殷や周時代の甲骨文や金文が、三分の二くらいを占めてもいい、それくらい字源は書道史を考えるのに重要と、講師の鈴木先生が言われていました。漢字は文字発生以前からの人間の意識が絵に反映されていますから、漢字の成り立ち=人間を知るということにつながるのだと思います。

 

その講座の中で鳥という字の話がありました。鳥の羽根は刺青と同じで強さの証明でもあったとのこと。殷墟から出土した「鳥」の甲骨文字では、たくさん羽根のような線がついています。

 

「日本神話の古代史」という森浩一氏の本を読んでいたら、ちょうど鳥の話が出てきました。神武東征の話で、イワレビコ(のちの神武天皇)は日向の国を船団で新天地を求め東へと進んでいくのですが、そのときウズヒコという者(神)に海上で出会います。ウズヒコはイワレビコ海上での先導者となるのです。

 

このウズヒコは亀の甲羅にのって釣りをしながら、イワレビコのほうへ「羽ぶききた」と書かれています。羽ぶき来たというのは、羽根を羽ばたかせてきたという意味で、羽根を付けていたということです。羽根が生えた人間というわけではないと思います。

 

また鳥取の角田遺跡から出土した土器には、鳥の羽を頭につけた人が船をこいでいる絵が描かれていました。このような鳥人の存在は古代日本だけではなく、中国南西部やベトナム北部にも例があるそうです。

 

ここからも日本人は海を行き来して江南(長江の南)、呉や越とのかかわりがあったことが想像できます。海を行き来する鳥人の存在が古代には普通に見られたようです。この鳥をつける意味についてまで調べ切れていないのですが、航海のまじないだったり、自分の力を誇示するなどの意図があったのかなと推測しています。

 

この鳥の羽根をつけることが強さの証明だというのは、現在の日本でも通じる話からと連想したのが、宝塚歌劇のこと。以前宝塚歌劇を見に行った話を書きました。

 

kusushodo.hatenablog.com

 

トップスターら数人は最後の登場で鳥の羽根のようなものをつけて登場します。本当に圧巻の姿。あれを見ておおーーと思わない人はいないだろうなというくらいの存在感。一部のスターにしかつけることが許されないわけですから、これもある意味、鳥の羽根は強さの証明という話と通じるのかなと思います。

 

殷墟から出てきた甲骨文に見られる「鳥」という字の羽根の強調、古代の東アジアの鳥人の風習、神武東征にもおおきくかかわったウズヒコの鳥の羽根。そしてそれが今の宝塚歌劇のスターの羽根にも通じているというのがとてもおもしろい。

 

今後も漢字の字源から日本の古代史、風習などにつながっていくお話も、やさい日記で紹介できたらと思います。いろいろと調べてみよっと。

 

字が上手になるだけが書の魅力じゃないことを伝えていきたい書道教

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