墨を磨る時間の価値
私たち現代人は何かにいつも追われています。
仕事、家事育児。親の介護など。
多忙ななか、なんとなく見てしまうスマホ。現代人が1日に受け取る情報量は、江戸時代の人の『一生分』に相当すると言われています。
私たちの脳は、休む間もなく動き続けていますよね。
そんな日常を少し離れて、ただ墨を磨って、ただ筆を運ぶ。自分を取り戻しリフレッシュする時間がとても貴重だと思います。
教室ではまず墨を磨ってから始めてもらっています。
不思議なことに、10分も磨れば十分書けるはずなのに、皆さんそれ以上に長く、静かに磨り続けていらっしゃいます。きっと、その時間が心地よく、贅沢なものだからでしょう。
この墨を磨る時間が日常と自分との境界線なのかもしれません。
イチロー選手は打席に入る前に必ず決まった動作を繰り返していました。
私たちが筆を持つ前に『墨を磨る』という時間もまた、イチロー選手のように、自分を最高の集中状態へと導くための、欠かせない儀式。
忙しい日常から少し離れ、儀式を経て、自分だけの世界に集中する。そんな時間を共に過ごせたらうれしく思います。