私の好きな文化人に川喜田半泥子という方がいます。数年前、いやもうだいぶんまえかな、あべのハルカス美術館で「川喜田半泥子展」がありました。その時半泥子を全く知らなかったのですが、西の魯山人と呼ばれていたとあったので、何気なく見に行ったわけです。
そしたらもう何とも言えない魅力があって半泥子は憧れの人となりました。本業は百五銀行の頭取を長年務めたので、銀行家・実業家といってもいいでしょうか。その実業のかたわら、特に陶芸に興味をしめし、素人ながらも優れた作品を生み出しました。
私が魅力的だと思った理由は、この陶芸も道楽で素人であることを貫き通したところです。よって自分の作品を売ることはせず、人にプレゼントしていたそうです。この精神がすでに遊びの世界であり、私があこがれる世界でもありました。
半泥子は陶芸だけでなく書画もすぐれていました。ユーモアあふれるその書画もまた私の心をつかんだのです。実業と趣味の両立、しかも道楽とうそぶきながらも人を魅了する作品を生み出せる芸術性と精神性。もうあこがれるしかないでしょう。
その半泥子が文化振興のため昭和5年に作った石水会館を母体とした博物館が、三重県の津にあり、いつか行きたい、行きたいと思っていました。今回仲間で伊勢志摩に泊まりに行く企画がありそれに参加するついでに津に寄って、石水博物館をはじめ半泥子をたどってみることにしました。
大阪難波から近鉄特急ひのとりに乗りました。ひのとりは名古屋への特急なのですが、人気なのか満席でした。ゆったりと車窓からの景色を堪能し、津でおりました。普段私は朝ごはんをたべないのですが、なんとなく特急電車って車内でたべたくなりません?
手作りおにぎり出来立てを難波駅の構内で買いました。ひのとりに乗り早速ほおばりました。あたたかくておいしい。もう旅行気分満喫です。約1時間半たって津に到着。15時ころまで時間があるので、まずはお昼ご飯。
目指すはレストラン東洋軒。土地の雰囲気を味わうため、近鉄津駅からゆっくり30分弱かけて歩いていきました。
東洋軒は半泥子が東京から出張所として開店をすすめた伝統のある洋食店です。またそこの名物ブラックカレーは半泥子が監修したといわれています。さっそくお昼のランチコースにするか迷ったのですが、ひのとりで食べたおにぎりでおなかがいっぱいで、また時間も少し焦り気味だったので、ブラックカレーだけを注文しました。
さすが老舗。ルーをいれる銀色のポット(グレービーポットっていうそうです)に黒いルーがたっぷりとはいっていました。それをスプーンでライスの上に都度かけて食べていくスタイル。これだけで高級感ありますよね。
これを半泥子が食べていたのか~なんて思いながら、こくのある辛さを味わいながら、ペロリといただきました。おいしかった。しかし戦前にカレールーを黒くすることを企画した半泥子とそれを実現した東洋軒のシェフはすごいですよね。戦前ですよ。昭和初期って恐慌もありましたが、やっぱり文化的にはどんどん進んでいった時代ですよね。なにか私の中であこがれる時代ではあります。
東洋軒のスタッフのみなさんも上品な感じでした。おかげでカレーの味わいだけではなく、上質なランチタイムを過ごせたと思います。次回はもっとおなかをすかせて、洋食のランチセットを頼もうと思います。
ここから石水博物館へと移動しました。その続きはまたのちほど!