くすのき書道教室ー兵庫県川西市ー

墨の香りx木の香り/ひとりひとりを丁寧に、少人数の書道教室

しいんとして居りましても、ココロオドル

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本当に気持ちの良い土曜日午前。はじまりの杜では木がそよぐ音、ウグイスの鳴く声、墨を磨る音、筆が紙に触れる音、いろんな音が聞こえてきて、「生きる」ことを実感させてくれました。自然とともに書道に触れるひととき。次回は6月3日(土)9時半から12時半、体験もお待ちしております。

 

意外だからこそ、ココロオドル

今年の2月ラオスに行きました。行きはジンエアーというLCCを利用しました。関空からインチョンでトランジットし、ラオスの首都ビエンチャンへと向かいました。

 

インチョンからビエンチャンへ向かう機内で、ポストカードが配られました。機内で書いたものを郵送しますというサービス。「日本へ送りたいけどいけます?」ってクルーに聞いたら「OK、送るよ!住所書いてくれたら。」といわれまして。『そりゃ、住所は書くけどさ、わざわざジンエアーが国際郵便代負担して日本までエアメール送るかな??』と半信半疑で書いて、クルーに渡しました。

 

ラオスから帰国しても一向に届かず、『そりゃ来るわけないわな…』と思っていて、そしてすでに存在すら忘れていた5月26日。

 

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届いた! 

 

ほぼ4か月です、4か月。ちなみに消印は5月12日。KOREA POSTとあるので、韓国から投函された模様。よくまあ迷子にならずうちに来たもので・・・。

 

4か月もの間どこをさまよっていたのか、そちらのほうが気になります。ビエンチャンでさまよっていたのでしょうか。いずれにせよ、ジンエアーのサービス担当の方、ありがとうございました。e-mailでは味わえない、手書きのハガキだからこその味わい。

 

メールなら一瞬で届くのに、エアメールだと4か月。(まあ普通のエアメールでも1ヶ月はかからないはず)4か月間も旅をしてきた1枚のハガキのおかげでココロオドル体験をさせてもらいました。

 

当たり前って面白くない。書道教室も当たり前をぶっ壊してココロオドル機会でありたいと思うのです。

 

鮮度の高い墨を運びたい

道教室の前日には仕込みをします。って料理みたいですが。墨液の仕込み。教室では墨を磨っていただき、なくなったら私が用意してきた墨液をご自身でもう一度磨っていただき、その墨液で書いて頂いています。仕込みでは墨磨り機で80%くらいの濃さで磨りあげています。あとの20%くらいを教室でご自身で磨っていただく。そういうことでお稽古時間を効率よくしようとしています。

 

暑くなってきたこの季節、墨液は時間が経てば腐ります。前日夜に磨って、翌日午前に使うのでその程度では腐ることはないのですが、なるべく鮮度高く家から教室まで運びたいわけです。せっかく教室に来て書いて頂くのであれば、いい状態の墨液で書いていただきたい。

 

その墨液の鮮度を保つには、抗菌効果のある「銅」が最も良いとされています。墨をいれておく容器は陶器が一般的なのですが、その銅で作った墨池があるのです。

 

 

よし、これに入れて運ぼうと思ったのですが問題がひとつありまして。

 

それは急な坂道。

 

はじまりの杜に車で行くには、めちゃめちゃ急な坂を上らないといけないのです。「この坂を車で運転できないからちょっと通えない・・・」と言われたこともあるくらいの坂道。(写真がないのでご想像にお任せしますが、なんせすごい坂)

 

坂道を車で登るときに、ちゃっぽんちゃっぽん墨液がこの銅の中で揺れるわけです。当然予想される最悪の結果は・・・墨液がもれてIKEAのビニール袋の中を真っ黒にして道具を汚してしまう!

 

それでも鮮度の高い墨液を運びたい

ここで迷うわけです。密閉できる容器に入れて、ジップロックで厳重に漏れないようにして運べば絶対に漏れない。でも鮮度は落ちる。一方銅の墨池に入れて運べば車で揺られて墨をこぼすリスクはあるけど鮮度は高い。

 

悩んだ結果・・・妥協するな!自分の理想を貫け!書道教室はすべてはお客様のためになんだ!という(ちょっと大げさな)声に従い、銅の墨池にいれて運ぶことにしました。

 

『坂道は速度を変えず、一気にかけあがろう』

それなら揺れが少ないはず・・・と思い、鼓滝の坂道に立ち向かいました。

 

速度を適度に保ち登り始めてすぐに・・・

 

うわっ、対向車が来たがや!!!

 

坂道細いんです。すれ違いできないかもしれないんです。これは坂道登って立ち往生が一番墨液によくない。いや墨液によくないのではなく、墨をこぼしてしまう。

 

これは一度よけて再度立ち向かうべき、と判断して、一旦下がってすれ違い出来る場所で対向車が下りてくるのを待ちました。

 

仕切り直し。

 

『次は対向車来ないでくれ・・・』

 

そう祈りながら、アクセルを一定に一気に登っていきました。時間にして10秒もないんでしょうけど、めっちゃ長く感じた瞬間。どきどき。

 

よかった!対向車なく坂道を登れました。しかしこれで安心はできません。教室は2階。階段を墨液の入った重い荷物をもってあがらないと。この瞬間も結構オソロシイ。そろりそろりと1段ごとに両足をそろえて上がります。

 

鮮度の高い墨液を運んだ結末とは

汗がにじみながら2階ギャラリーに着きました。緊張の瞬間です。これで墨液がこぼれていたら・・・教室に来られる方にも影響が出るかもしれない。紙を汚していたら。テキストを汚していたら。大変まずい。

 

さて結果は。 

 
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無事でした。

 

一滴もこぼれていませんでした。よかった。墨は鮮度を保ったまま、無事はじまりの杜へと運ばれたのです。これで鮮度の高い墨液でみなさんに書いていただける。よかった。すべてはお客様のために!鮮度の高い墨で書いてもらおう~。

 

なのに、なのに。

 

今日は誰も教室に来なかった・・・(笑)

 

墨をこぼして汚すリスクを背負いながら、坂道を行き交う恐怖を味わいながら、そろりそろりと抱えて2階まで登った緊張感、すべてはお客様のために、のつもりが・・・

 

それでも気分を変えて鮮度の高い墨液で書いた作品。

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結局、すべては自分のためにやん!というツッコミは大歓迎です。

 

「ひなげしはみなしいんとして居りました ひのきはまただまって 夕方のそらを仰ぎました」

 

『教室はみなしいんとして居りました』やな、ってちょっと一人笑っちゃいましたが。

 

宮沢賢治 ひのきとひなげし